フランク・ロイド・ライト、ル・コルビュジエ、ミース・ファン・デル・ローエら、近代建築のいわゆる巨匠の時代が終わったあと、彼らの影響圏から離れ、真に独自の建築を作りえた「遅れてきた巨匠」ルイス・カーンの住宅作品を集めた本である。カーンの代表作と言えばキンベル美術館、ソーク研究所など比較的大型の建築の名が挙がるだろうが、しかしカーンがこつこつと作り上げた住宅はそれらに勝るとも劣らぬ魅力を持つ。キンベル美術館のような傑作が重要であることは間違いないが、たとえばフィッシャー邸やエシェリック邸を抜きにしてカーンという建築家を語ることはできないだろう。しかしこれまでカーンの住宅作品についての十分な日本語の資料はなかった。多くのカーンに関する書物がその住宅作品についてはせいぜい小さな図面と写真数枚を紹介する程度で、バランスに欠ける傾きがあったことは事実であろう。こうした不均衡を一気に解決する1冊である。 カーンの住宅に接近するためには、とりわけ図面を参照しながら時間をかけて読み解くことがどうしても必要になる。その緊密なプロポーションの構成、思慮深く練り上げられた空間の充実、そして年月を経て現在もなおみずみずしさを失わないマテリアルの取り合わせ、どれをとっても表面的に眺めるだけではとらえることのできない深さを持っている。四季折々の豊かさを見せる美しい写真とともに各種の図面が丁寧に折り込まれ、たとえばフィッシャー邸ひとつのために実に60ページを費やすという、まさに徹底的なドキュメントである。一つひとつのページをめくるたびカーンの建築の圧倒的な密度にあらためて驚かされるだろう。 同時に感嘆せざるを得ないのは、建てられてから50年近くを経たカーンの20件の住宅が丁寧にメンテナンスされて今もなお美しい姿を保っていることだ。そこには確かに愛されている建築の姿がある。多くの建築家の住宅が歴史に翻弄されあるいはトラブルに巻き込まれ、残念な姿を見ることは決して少なくない。しかしここに集められたカーンの住宅の状態の良さには驚くべきものがある。とりわけフィッシャー夫妻が建設当時を振り返って語るコトバは建築の幸福とでも言うべきなにかを雄弁に物語っているだろう。カーンはそれを与ええたし、彼らはそれを享受できた。そして本書において、読者はその片鱗に触れることができるはずだ。(日埜直彦)
ルイス・カーン TOTO出版
斉藤裕氏の写真によるTOTO出版の小さいサイズシリ?ズ。
とにかく写真が美しいので、設計を志すものは
そばにおきたいシリーズでは?。
もちろん、資料にもなるのですが、
まとめ、写真は秀逸で、まだ購入しやすい価格帯でもあります。
スカルパ等のシリーズの1万円の本となると考えますもんね。
建築の熟練者、初心者問わず
エシェリック邸、フィッシャー邸の写真資料は
持っておきたい方は多いはず。
ルイス・カーンの言葉を聞いて
ルイス・カーンについて知ろうとしてこの本を見てもわからない。
ここに来る前にルイス・カーンの言葉をよく聞いてから見るべき本だと思う。そうでなければ単なる写真集でしかない。
この本の貴重なところは実際に住んでいた方の言葉が掲載されている事。(フィッシャー邸)他の本では空間を分析するだけのものが多く、実際に経験されれた方の感想は少ない。それ故この本は貴重だと思う。
P12「空間を分ける」と言う文章があるが、これは正しくもあり、正しくもなし、ではないだろうか。もともとルイス・カーンは空間を分けていない。結果から言えば分けて考えていると言えなくもないがそれは少し機能主義的見方かもしれない。ルイス・カーンの空間は人間の行いに対して寄ってきて共同体となるものなのだから。
基本設計中の参考にどうぞ
フランク・ロイド・ライトの建築が気に入っていましたが、いろいろと調べている内にルイス・カーンにたどり着きました。本当に質感の高い建築は、普遍的であると思い知らされました。この本のおかげでコンセプトに共感できる建築家とも巡り会うことができました(^^)。基本設計に1年半ほど要しましたが、未来に受け継いでいける住宅ができそうです。
自宅建築のコンセプト
昨年自宅を新築したが、それにあたり方々の評判住宅やモデルハウスを見学したり、多数の住宅関連雑誌等を見たが全く参考にならず徒労に終る。結局最終的にはこの本が唯一の住宅建築のコンセプトつくりの一助になった。全てがまるで宝石のようなカーンの住宅、それに比べなぜに日本の住宅はかくも”ブザマな物”になったのか、嘆かわしい!
愛情のこもったカーン住宅作品集
名作キンベル美術館の作者の住宅作品集を、愛情こめて綴った本。大建築家の名声を得た後でも、経営的には割りに合わない個人住宅を重視して時間をかけて設計・建築していったカーンの人柄は、フィッシャー夫妻のカーン追想録に偲ばれる。安藤忠雄さんも、個人住宅は一人前の建築家になる試金石として、今でも重視されているようです。 カーンは「光」を大切にし、「どのような太陽のひとひらが、あなたの部屋に入ってきますか」と問うた。日本人なら、秋の日、障子に移る落葉樹のゆらぐ葉影と流れる雲の影に、自然の微妙な移ろいを感じるので、カーンの考えに素直に共感できるだろう。 個人的には、カーン最後の作品「コーマン邸」が住みたいと思う住宅です。木と石と暖炉をモチーフとしたカーンの集大成。日本人の感覚からすると、屋根が平板で夏大丈夫かと心配になる。緯度の高いフィラデルフィアなので、真夏の灼熱地獄はないのでしょう。建築は風土と密接不離のようです。 「コーマン邸」を知ると、日本建築の良さ・ありがたさを再認識します。腕の良い大工さんが、クライアントの希望を聞いて、シンプルかつ愛情込めて丁寧に建てたならば、世界的にも最高水準の住宅なのだと…。
TOTO出版
AALTO 10 Selected Houses アールトの住宅 カーサ・バラガン アスプルンドの建築 1885‐1940 ル・コルビュジエの全住宅 堀部安嗣の建築
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